自腹で買った mini PC を徹底レビューする

Linux サーバーノードとして「ちょうどいい」 mini PC を探して、2025 年にかけて実際にいくつも自腹購入して検証した結果をまとめた。

用途は、主に Kubernetes クラスターのワーカーノード/小規模なオンプレ検証環境としての利用を想定している。その上で動作させるワークロードは、Web サーバ用途(CDN 自作講義の教育用・研究開発用)や、Go でのサーバー開発用途がメインになる。

※この記事内の一部リンクには、Amazonアソシエイトアフィリエイト)リンクが含まれます。 掲載している製品はすべて自腹で購入し、実際に検証したものです。 リンクを経由して購入いただくと、著者にわずかばかりの紹介料が入ります。今後の mini PC 検証や技術記事の更新に充てられるため、とても励みになります。

本記事の前提・選定ポリシー

まず、本記事での前提と、mini PC を選ぶ際に重視したポイントを整理しておく。

重視した要件

選定にあたって、特に重視したのは下記のポイントだ。

  • とにかく安価であること(とくに「サーバー用途ベンチマーク性能あたりの価格」)
    • Envoy Proxy で簡易的な HTTP/3 サーバを立て、Request Per Second(RPS)あたりの価格を見る
  • メモリ容量
    • 最低 12GB 搭載されていること
    • Kubernetes ノードとして動作させるため、コントロールプレーンを含めた余裕が必要
    • 8 コア以上の CPU では複数pod混載を想定し 32GB 以上
  • (できれば)XDP や DPDK が動作する NIC が搭載されていること
    • 高速なパケット処理が必要なワークロードを動かす可能性があるため
  • (できれば)2.5GbE 以上、理想は SFP+ ポート搭載

あえて重視しないもの

一方で、一般的なレビュー記事では推されがちだが、本記事ではあえて重視していないポイントもある。

  • 手触りの良さ、見た目の良さ
    • ラックや棚に押し込んでしまうので重視しない
  • Windows の正規ライセンス有無
    • Debian Linux をインストールするので、付属ライセンスは不要
    • 非正規ライセンスが付属していても、そもそも使わないので問題にならない
  • GPU 性能
    • ゲームや生成 AI などの GPU ワークロードは想定していない
  • 長期安定運用
    • Kubernetes ノードとして想定しており、むしろ適度に障害が起きてくれたほうが検証環境としては都合がよい
  • Wi-Fi / Bluetooth の有無
    • 有線 LAN 接続前提のため不要

購入した mini PC 一覧と評価軸

本記事では、価格帯ごとに「RPS/円(コスパ)」を中心に見ていく。

ざっくりとした目安は以下のとおり。

  • RPS/円 が 5.0 を超える … 非常にコスパ良好。用途と在庫があれば積極的に狙いたいライン
  • RPS/円 が 3.0〜5.0 … 用途次第で十分アリ。メモリや NIC 構成を見て判断
  • RPS/円 が 3.0 未満 … 今回の用途(Linux サーバーノード)に限れば、積極的に選ぶ理由は薄い

以下、価格帯別に実機レビューを書いていく。

購入した mini PC – 1〜3 万円クラス

N100 や N95 など、Alder Lake-N 系 CPU を搭載した mini PC が中心となるレンジ。絶対性能や RPS/円 では上位モデルに劣るが、1 台あたりの価格が圧倒的に安いため、検証用途や学習用途として「数を揃える」場面で非常に魅力的だ。

Hitabt M30A(おすすめ度: ★★★★★)

  • 購入時期: 2025 年 10 月
  • 購入先: amazon.co.jp
  • 価格: 12,800 円
  • CPU: Intel N100
  • メモリ: 16GB
  • ストレージ: 512GB SATA SSD
  • NIC: Realtek 1GbE ×1 ポート

とにかく圧倒的に安価で、この価格帯では頭ひとつ抜けている。 残念ながら一瞬で完売してしまった。再入荷したらぜひ買い増ししたいレベル。

良かった点

  • N100 搭載・メモリ 16GB・512GB SSD で 1 万円台前半という価格設定
  • Kubernetes ノード用途であれば、軽めのワークロードを複数載せてもまだ余裕がある

注意点

  • amazon 販売ページの写真と、実際に届く筐体がまったくの別物
    • 写真より一回り大きい筐体が届くので、サイズをギリギリで見積もると危険
  • Windows のライセンスキーは、amazon メッセージ経由で別途問い合わせが必要

Envoy ベンチは未計測だが、後述する NucBox G2 と同程度の性能と考えられ、5.0 RPS/円超えを期待できる。

GMKtec NucBox G2(おすすめ度: ★★★★☆)

  • 購入時期: 2025 年 8 月
  • 購入先: AliExpress
  • 価格: 13,712 円
  • CPU: Intel N100
  • メモリ: 12GB
  • ストレージ: 512GB SATA SSD
  • NIC: Realtek 1GbE ×2 ポート

Envoy ベンチ結果は 68,259.87 RPS4.98 RPS/円

1GbE ポートを 2 ポート備えているため、安価な N100 機で「ルーター兼ちょっとしたサーバー」的な使い方をしたい人にはかなり扱いやすい 1 台。

GMKtec NucBox G10(おすすめ度: ★★☆☆☆)

  • 購入時期: 2025 年 8 月
  • 購入先: amazon.co.jp
  • 価格: 26,998 円
  • CPU: Ryzen 5 3500U
  • メモリ: 16GB
  • ストレージ: 512GB NVMe SSD
  • NIC: Realtek 2.5GbE 1ポート

Envoy ベンチ結果は 62,434.13 RPS2.31 RPS/円

N100 搭載機と比較すると GPU 性能は明らかに高いが、今回の用途では GPU を一切使わないため、コストパフォーマンスはかなり厳しいGPU を使うワークロード(簡易なゲーム、動画再生、GPU 前提のアプリなど)があるなら別だが、Linux サーバーノード用途だけで見ると積極的に選ぶ理由は薄い。

このクラスの mini PC としては珍しく、NVMe SSD (Gen3)を搭載しているのはメリット。

購入した mini PC – 4〜10 万円クラス

ここからは、Ryzen Zen4/5 世代を中心とした「ある程度本気で使う」価格帯になる。ベアボーン構成のものも多く、メモリ/ストレージの別途調達コストも含めてトータルで考える必要がある。

Topton D12(おすすめ度: ★★★☆☆)

  • 購入時期: 2025 年 8 月
  • 購入先: AliExpress
  • 価格: 32,044 円(本体のみ)
  • CPU: Ryzen 5 7640HS(6 コア 12 スレッド、Zen 4 世代)
  • メモリ/ストレージ: 別途用意(ベアボーン構成)

Envoy ベンチ結果は 315,603.2 RPS

  • ベアボーン本体価格のみで見ると 9.84 RPS/円 と非常に優秀
  • ただし、メモリとストレージを別途購入すると+ 3-4 万円前後は見込む必要がある
    • その場合、トータルでは おおよそ 5.0 RPS/円 前後 に落ち着くイメージ

「手元に余っているメモリや SSD がある」「ストレージは少なめで良い」といったケースでは依然としてかなり魅力的な選択肢。

GMKtec NucBox K12(おすすめ度: ★★★★☆)

  • 購入時期: 2025 年 9 月
  • 購入先: AliExpress
  • 価格: 41,637 円(本体のみ)
  • CPU: Ryzen 7 H 255
    • 8 コア 16 スレッド、TDP 45W の Zen 4 世代 CPU
    • Ryzen 7 260 の選別落ち品という噂(260 に搭載される Ryzen AI が無効化されていると言われている)
  • メモリ/ストレージ: 別途用意(ベアボーン構成)
  • NIC: Realtek 2.5GbE(RTL8125D)×2 ポート

Envoy ベンチ結果は 412,615.47 RPS

  • ベアボーン本体代金のみなら 9.91 RPS/円 と非常に優秀
  • メモリ・ストレージを 3 万円分乗せると、トータルでは 約 5.75 RPS/円 程度

Topton D12 と同様、「手元のパーツを有効活用できるかどうか」で評価が変わるモデルだが、CPU 性能自体は非常に満足度が高い。

今回の用途から離れるが、内臓GPUも「Radeon 780M」を搭載しているため、デスクトップ用途でも活躍できるのもポイント。

また、同クラスの他 mini PC と比較して、一回り筐体が大きく、排熱設計に配慮が見られる。Performance モードなど、TDPを盛る設定で利用するのであれば、おすすめ。

注意点

RTL8125D は、Linux カーネル 6.14 以降の r8169 ドライバで動作するが、Debian Trixie は 6.12 LTSベースのため、プロプライエタリの r8125 ドライバを別途インストールするか、Debian testing (forky) など、より新しいカーネルを採用しているディストリビューションを利用する必要がある。

Reatan A8(おすすめ度: ★★★★★)

  • 購入時期: 2025 年 11 月
  • 購入先: amazon.co.jp
  • 価格: 65,436 円(メモリ・ストレージ込み)
  • メモリ: 32GB
  • ストレージ: 1TB SSD
  • CPU: Ryzen 7 8745HS(8 コア 16 スレッド、Zen 4 世代、TDP 45W)
    • AMD 公式サイトには載っていないが、8845HS の選別落ち品で Ryzen AI が無効化されているモデルという噂がある
  • NIC: Realtek 2.5GbE(RTL8125BG)×2 ポート

8745HS は前述の H 255 と比較しても高速な CPU で、6.3 RPS/円超え と非常に優れたコストパフォーマンスを実現している。

メモリ 32GB・1TB SSD・2.5GbE ×2 というバランスの良い構成込みでこの価格なので、

よりも、完成品として Reatan A8 を買ってしまったほうが総額を抑えやすいのも大きなポイントだ。

参考までに、Windows Pro 11 がOEM_DMチャネルでアクティベーションされた状態で到着した。

注意点

同クラスのCPUを積んでいる NucBox K12 と比較すると、冷却ファンがだいぶ心許ない。連続負荷をかけた時に、サーマルスロットリングが起きないかは注意する必要がある。

購入した mini PC – 10 万円以上クラス

ここまでくると、メーカーとしても「小型ワークステーション」を標榜するモデルになる。コストパフォーマンスは高いが、故障リスクの重さが増す点には注意したい。

Minisforum MS-A2(おすすめ度: ★★★★★)

  • 購入時期: 2025 年 11 月
  • 購入先: ソフマップ
  • 価格: 159,800 円(メモリ 64GB・SSD 1TB 込み)
  • CPU: Ryzen 9 9955HX
    • 16 コア 32 スレッドの Zen 5 世代 CPU、TDP 55W
  • メモリ: 64GB
  • ストレージ: 1TB Gen 4 NVMe SSD

2025 年 11 月時点ではメモリ・ストレージ価格がかなり高騰しているが、一部国内 EC サイトではまだ価格改定前の値付けで販売されており、うまく拾えると非常にお買い得。

ネットワーク・I/O 周り

  • NIC: 10GbE SFP+ ポート ×2
  • X710相当で、Linux では i40e ドライバで動作
  • DPDK 対応、XDP フックも利用可能

高速ネットワーク前提の検証環境としては、mini PCとしては珍しいほど使いやすい構成になっている。

Envoy ベンチ結果は 964,803.15 RPS。メモリ・ストレージ込みで 6.03 RPS/円 と、ハイエンド帯としてはかなり優秀な数値だ。

購入前に注意しておきたいポイント

非常におすすめできるモデルである一方で、いくつか事前に理解しておくべき注意点もある。

1. 高価ゆえの故障リスクの重さ

要件セクションでは「長期安定性は重視しない」と書いたが、10 万円を超えるノードになると、さすがに故障時のダメージは無視できない。

Minisforum MS-A2 そのものでは未再現だが、類似モデルの Minisforum MS-01 では CMOS バッテリーの放電問題が知られている。 症状としては、長期利用中のノードで再起動が失敗する、という形で現れる。検証環境とはいえ、復旧に人手がかかる故障モードは体験が良くない。

この価格帯を複数台そろえる場合は、「壊れたら買い替えればよい」では済まなくなってくるので、その点は覚悟した上で選びたい。

2. 排熱設計への配慮が必須

本シリーズの大きな特徴のひとつが PCI Express スロットを利用できる 点だが、ConnectX-5 以降のようなサーバー向け高速 NIC を載せる場合は、発熱をかなり真面目に考える必要がある

設置場所のエアフローや周辺温度を含めて、事前に排熱設計を考えておくのがおすすめだ。

3. NVMe スロット配線の不安定さ

Debian Linux forky をインストールして運用しているが、SSD0 スロットに付属 NVMe SSD を搭載すると、PCIe AER エラーが頻発し、dmesg にエラーメッセージが大量に出力される事象に遭遇した。

  • UEFI 設定で SSD0 スロットのリンク速度を Gen3 に制限することで、ひとまずは回避できることを確認した
  • ASPM が原因とする報告 もあり、ASPM を無効にすることで Gen4 のまま安定動作させられる可能性もある。ただし、こちらはまだ手元では未検証

NVMe に負荷をかける用途には、やや注意が必要であり、データ破損に備えて、バックアップ対策は強くおすすめする。

4. 内蔵GPUの性能

CPU性能は非常に高いが、内蔵GPURadeon 610M であり、性能はかなり控えめ。内蔵GPUに頼るデスクトップ用途では、K12やA8のほうが快適に使える可能性が高い。

GMKtec EVO-X2(おすすめ度: ?)

  • 購入時期: 2025 年 5 月
  • 購入先: amazon.co.jp
  • 価格: 298,990 円(メモリ 128GB・SSD 2TB 込み)
  • CPU: Ryzen AI Max+ 395
    • 16 コア 32 スレッドの Zen 5 世代 CPU、TDP 55W
    • Radeon 8060S Graphics を搭載している点がポイント
  • メモリ: 128GB Quad Channel
  • ストレージ: 2TB NVMe SSD

Envoy ベンチ結果は 924,126.93 RPS 。性能は高いが、メモリストレージ込みで 3.09 RPS/円 と、コストパフォーマンスはあまり良くない。

このPCの最大の特徴は、大容量メモリと高性能GPUを搭載しており、Local LLMサーバーとしての活用ができる点にある。 gpt-oss-120bモデルをllama.cppで動作させることができ、45tok/sで動作することを確認した。ローカルLLMサーバ構築手順はさくらさんのブログに詳しく、高速動作のためのノウハウは、kyuz0氏がgithub上で まとめられているので是非参考にされたい。

まとめとおすすめモデル

最後に、おすすめモデルを整理しておく。

Alder Lake-N(N100 など)搭載機

N100 などの Alder Lake-N 系 CPU を搭載した mini PC は、とにかく低価格品を狙い撃ちし、故障時は割り切って使い捨てる 運用を提案したい。

  • 目安としては、15,000 円以下のモデルは見つけ次第キープしておく価値がある
    • Hitabt M30Aが再入荷したら是非リピートしたい
  • ただし、2025 年 11 月時点では、その価格帯で入手するのはかなり難しくなってきており、ここが悩ましいところ

3−10万円クラス

2025 年 11 月の Amazon ブラックフライデーセール価格で、個人的に最もおすすめしたいのは Reatan A8 だ。

  • 2.5GbE ポート ×2
  • Ryzen 7 8745HS 搭載の高性能 CPU
  • メモリ 32GB・SSD 1TB 込みで 6 万円台中盤

16GB DDR5 SO-DIMM のペアだけで 3 万円を超え、1TB の NVMe SSD も 1 万円超が相場になっていることを踏まえると、

  • ベアボーンキットを買って、メモリとストレージを別途調達する

よりも、Reatan A8 の完成品構成をそのまま買うほうが総額では確実に安上がりになるケースがほとんどだろう。

ハイエンドの Minisforum MS-A2

10万円を超えるハイエンド miniPC で高性能な Linux サーバーを構築するには、Minisforum MS-A2 を是非検討されたい。 特に、Minisforum の価格調整 にまだ追従していない EC サイトで旧価格の在庫を拾えると、ハイエンド帯としてはかなり破格と言ってよい。

一方で、高価・高性能ながら、信頼性としては他の激安 mini PC と大差ない点には十分留意されたい。